カメムシが大量発生する背景とは
「今年はカメムシが多い」と感じたことはありませんか?
実はカメムシの発生量は年によって大きく変動します。2023年秋には全国各地で大量発生が報告され、2024年には30都府県が「カメムシ注意報」を発表しました。これは過去10年で最多の発表数です。
カメムシは農作物に被害を与えるだけでなく、家屋への侵入や悪臭被害など、私たちの生活にも影響を及ぼします。大量発生を事前に予測できれば、適切な対策を立てられますよね。
本記事では、カメムシが大量発生する原因を気候・環境要因から科学的に解説し、発生予測の方法までご紹介します。
カメムシの生態と発生サイクル
カメムシは年に1~3回程度発生し、特に4月から10月に活動が活発になります。
普段は山林に生息していますが、繁殖や越冬などの過程で生活場所を変える際、一部が市街地に飛来して農作物を加害したり住宅に侵入したりします。越冬した成虫は春に山へ移動し、夏にスギやヒノキの球果を摂食して繁殖するのです。
秋になると成虫が山から農地や市街地へ飛来し、山林や住宅地で越冬します。この時期に家屋への侵入が増えるため、多くの人が「カメムシが増えた」と感じるわけです。
主要なカメムシの種類
日本には1,300種以上のカメムシが生息していますが、大量発生して問題となるのは主に以下の種類です。
- ツヤアオカメムシ – 体長約15mm、光沢の強い緑色が特徴。光に集まる習性があり、家屋に侵入しやすい
- チャバネアオカメムシ – 体長10~12mm、緑色の身体と茶色の翅を持つ。夜間に灯火に集まる
- クサギカメムシ – 体長15mm前後、暗褐色にまだら模様。農業害虫として重要視されている
- マルカメムシ – 体長5mmほど、丸い形状で暗黄褐色。マメ科植物を好む
2023年秋に阪神間で大発生したのはツヤアオカメムシでした。この種は夏に山のスギやヒノキの実を吸って繁殖し、9月中下旬以降に山から分散します。
出典 伊丹市昆虫館「大量発生しているツヤアオカメムシの生態と対策の解説」(2024年4月)より作成
カメムシ大量発生の3つの主要原因
カメムシの大量発生には、季節ごとに異なる要因が関係しています。
春から夏の大量発生:暖冬の影響
春から夏にかけてカメムシが大量発生する最大の要因は暖冬です。カメムシは成虫で越冬するため、冬の気温が高いと越冬成虫の生存率が高まります。
生き残った成虫の数が多いと、山林でのエサが不足します。その結果、エサを求めて市街地に飛来する個体が増えるのです。また、春先の高温によりスギやヒノキの球果の成長が早まってエサが不足し、市街地に飛来する場合もあります。
さらに、春から夏にかけて天候に恵まれると、エサとなるスギやヒノキの球果が増え、越冬成虫が増加し、翌年の春に飛来する数が増えるケースもあります。
夏から秋の大量発生:自然災害の影響
夏から秋にかけて、台風などの自然災害により山林の球果が減少すると、多くのカメムシがエサを求めて市街地へ飛来します。
ただし、自然災害を機にカメムシが大量発生している場合、発生は一時的で持続しないのが一般的です。台風の強風によってカメムシが山林から強制的に飛ばされたり、スギやヒノキの実が落ちて餌が減少することで、果樹園や市街地への飛来が増加してしまうこともあります。
秋の大量発生:繁殖成功と越冬場所の探索
夏にエサとなるスギやヒノキの球果が豊富な場合、繁殖が進んで越冬しようとする成虫が増えます。
成虫は暖かさを求めて人家で越冬しようとするため、秋にカメムシの目撃が増え、より大量発生しているように感じられるのです。光に集まる習性があるため、街灯や建物の照明に集中し、周辺の出入口や窓から家屋内に侵入することがあります。
出典 KINCHO園芸「カメムシが大量発生する原因とは?生態や発生原因・対策を解説」(2025年4月)より作成
気候変動とカメムシ発生の関係
温暖化はカメムシの発生パターンに大きな影響を与えています。
冬季死亡率の減少
温暖化により冬が高温化したことで、冬を生き延びる個体が増加しています。特に、あらゆる農作物に害を及ぼすミナミアオカメムシは、元々はアフリカ原産ですが、現在では全国的に広がっています。
元々ミナミアオカメムシは増殖率が高いものの寒さに弱く、高緯度地域や山地への侵入は妨げられていました。しかし温暖化の影響により、より緯度の高い地域へと分布を拡大しているのです。
繁殖開始時期の早まりと活動の活発化
気温が上がるとカメムシの活動を始める時期が早まります。2024年5月までの気温は、北日本で平年より高く、東日本は平年並みまたは高いと予想され、カメムシ類が比較的早く活動を始める可能性がありました。
また、複数の種で世代交代の時期に当たる6~8月頃は、全国で平年よりも気温が高いと予想されます。高温はカメムシ類の活動を活発にし、発生量の増加や発生時期の長期化につながる恐れがあります。
カメムシは変温動物のため、気温が高いと成長スピードが速まり、年間の発生数も増加します。2023年の夏は日本全体で記録的な猛暑となり、6月から8月の平均気温は平年よりも1.76度高く、これは1898年の統計開始以降最も高い数値でした。
出典 日本農業新聞「今夏もカメムシ要警戒 高温で発生増、長期化」より作成
カメムシ発生を予測する3つのポイント
カメムシの発生量を事前に予測することは可能です。
「気温」「スギやヒノキの実の量」「天気」の3つの要因を分析することで、ある程度の予測ができます。
① 冬の気温(暖冬かどうか)
春に見かけるカメムシは、前年に生まれた個体が越冬して春になって活動を再開したものです。そのため、秋に大量発生した年は、たくさんの個体が越冬します。
冬の気温が高い(暖冬)と多くの個体が生き残り、春に大量発生しやすくなります。たとえば、2023年~2024年の冬(12月~2月)の平均気温は平年より+1.1~1.6度高く、暖冬でした。その結果、2024年の春には多くのカメムシが発生しました。
予測のポイント:前年秋の個体数と冬の気温をチェックしましょう。暖冬なら春のカメムシが増える可能性が高まります。
② スギ・ヒノキの実の量(食料の多さ)
秋に大量発生するカメムシは、春に目覚めたカメムシが産んだ卵から孵化し、夏の間に成長した新成虫です。
カメムシの主な餌は、スギやヒノキの実。そのため、スギやヒノキの実が豊作の年は、カメムシの数も増えやすくなります。2025年のスギ・ヒノキの実の量を予測するためには、花粉飛散量を参考にするのがポイントです。
2025年の花粉飛散量は、九州から近畿地方では前シーズン(2024年)と比べて非常に多く、北陸・関東甲信・東北南部でも多い傾向が見られます。一方、東海地方は前シーズン並み、東北北部と北海道では少ないと予測されています。
予測のポイント:スギ、ヒノキの花粉量をチェックしましょう。花粉が多ければ実も多くなり、カメムシが増えやすくなります。
③ 天気(降水量・台風の影響)
カメムシは変温動物のため、気温が高いと成長スピードが速まり、年間の発生数も増加します。一方で、台風や大雨が多いと数が減る傾向があります。
2023年は日本に台風が1つ上陸し、これは平年の3.0個を下回る数でした。また、日本への台風の接近数は9個で、平年の11.7個よりも少なくなっています。
予測のポイント:気温と天候をチェックしましょう。気温が高いと成長スピードが速まり、個体数が増えます。大雨が多い年はカメムシが減る可能性がありますが、台風通過後は果樹園や市街地への飛来に注意が必要です。
出典 Yahoo!ニュース エキスパート「2025年も大量発生する?カメムシ発生予測の方法とは」より作成
2025年のカメムシ発生予測
ここまでのデータをもとに、2025年のカメムシ発生の可能性を整理してみましょう。
大量発生の可能性が高い要因
- 2025年春のスギ・ヒノキの花粉飛散量が多い(特に西日本で例年の2倍以上)
- 2025年1月の日照時間が全国的に多く、カメムシが越冬しやすい環境だった
- 長期的な温暖化の影響で、カメムシの生息環境が安定している
発生が抑えられる可能性がある要因
- 2025年2月の気温が低くなれば、減る可能性がある
- 2025年の天気が大雨や台風が多い場合、減る可能性がある
2月から4月の動向は見逃せません。特に西日本では花粉飛散量が多いため、カメムシの発生にも注意が必要です。
カメムシ対策は早めが肝心
カメムシが増えそうな年は、早めの対策が重要です。
特に、春先から次のような対策を実施しましょう。
- 窓や換気口の防虫ネット対策
- 洗濯物を取り込む際のチェック(白い衣類に寄ってくる)
- 防虫スプレーの使用(窓やベランダに定期的に噴射)
- 家の周囲の草木の手入れ(カメムシが隠れやすい環境を減らす)
より強い光により多く集まるので、建物の入口や窓、集合住宅の廊下などは、消してもよい照明を落とすなどして光量を下げるとカメムシの誘因数を減らすことができます。
室内に入ってきたカメムシは、底を切ったペットボトルの中にそっと追い込み、外に放り出すことをおすすめします。カメムシは刺激しなければにおいを出すことはありません。
まとめ:科学的知識で事前対策を
カメムシの大量発生は、暖冬、スギ・ヒノキの実の豊作、気温上昇などの要因が複合的に作用して起こります。
これらの要因を理解し、冬の気温、花粉飛散量、天候の3つのポイントをチェックすることで、ある程度の発生予測が可能です。2025年は特に西日本で花粉飛散量が多いため、カメムシの大量発生に注意が必要でしょう。
早めの対策を立てることで、農作物への被害や生活への影響を最小限に抑えることができます。気候と環境の変化を見逃さず、科学的な知識に基づいた対策を実践していきましょう。
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