カメムシ越冬数が平年の3倍——2026年は全国で大量発生の恐れ

山口県病害虫防除所が2026年春に公表した越冬調査の結果が、果樹農家と住宅地の双方に緊張を走らせている。調査地1カ所あたりのカメムシ越冬数は88.9匹で、平年値の約3倍。果樹に甚大な被害を出した2024年の大量発生時に匹敵する水準だ。九州・近畿では早くも注意報が発令されており、農林水産省は全国の果樹産地に防除の徹底を呼びかけている。

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山口県の越冬調査が示す「異常値」

山口県農林総合技術センター傘下の病害虫防除所は、毎年10月にカメムシの越冬トラップを設置し、翌2月に回収・計数する定点調査を実施している。2026年春の調査結果では、1カ所あたり88.9匹のカメムシが確認された。これは平年の約3倍にあたり、全国30都府県に注意報が出された2024年の越冬数に匹敵する数字だ。

防除所の専門研究員は「スギ・ヒノキの球果が2025年に豊作だったことで、エサとなる種子が潤沢にあり、越冬するカメムシの個体数が増えた」と分析。暖冬で寒さによる淘汰が進まなかったことも、越冬成功率を押し上げた要因だとしている。

被害の中心は果樹カメムシ3種

果樹を加害するカメムシは30種以上が知られているが、被害の中心となるのは以下の3種だ。いずれも口吻で果実の汁を吸い、果面を凹凸に変形させたり、内部をスポンジ状に劣化させたりして商品価値を著しく落とす。

種名体長主な加害果樹特徴
チャバネアオカメムシ10〜12mmナシ・モモ・カンキツ灯火に集まりやすく住宅地への飛来が多い
ツヤアオカメムシ14〜17mmカンキツ・カキ・ビワ大型で光沢のある緑色、温暖な地域に多い
クサギカメムシ13〜18mmリンゴ・ナシ・大豆強烈な悪臭を放ち、住宅への越冬侵入が目立つ

ナシへの被害は深刻で、袋がけをしていてもカメムシが袋の上から口吻を刺し、果汁を吸うケースが報告されている。山口県の産地では「いびつに変形してしまったナシ」が毎年出荷できず廃棄となっており、農家の経営を圧迫している。

2024年の大量発生を振り返る

2024年春は30都府県に「果樹カメムシ類注意報」が発令された、過去10年で最悪の発生年だった。兵庫県加西市のモニタリングポイントでは、チャバネアオカメムシの4月合計捕獲数が901匹に達し、平年比31倍という異常値を記録。調査6地点中4地点で平年比11〜71倍の誘殺数が確認された。

この大量発生の原因は3つの条件が重なったことにある。前年夏にスギ・ヒノキの球果が豊作となりエサが潤沢だったこと、暖冬で越冬中の死亡率が下がったこと、春先の高温で覚醒が早まり加害期間が長期化したことだ。2026年も同じパターンが繰り返されようとしている。

都道府県別の注意報・警戒状況

地域状況主な対象果樹
九州北部(福岡・佐賀・長崎)注意報発令済みナシ・カンキツ・ビワ
近畿(兵庫・大阪・奈良)注意報発令済みモモ・ナシ・カキ
山口県注意報発令の可能性ありナシ・ウメ・カンキツ
中国地方(広島・岡山)越冬数が平年比2倍超ブドウ・モモ・ナシ
関東(群馬・千葉・埼玉)越冬量増加を確認ナシ・リンゴ・大豆
東北平年並み〜やや多いリンゴ・サクランボ

農林水産省は病害虫発生予察情報を通じて各都道府県の防除所に監視強化を指示しており、今後5〜6月にかけて追加の注意報が出される見通しだ。

専門家・現場の声

山口県病害虫防除所の専門研究員は「これから6月にかけてカメムシの発生数は大幅に増える可能性がある。果樹農家は例年以上に早めの薬剤散布を心がけてほしい」と注意を促している。

農林水産省 消費・安全局 植物防疫課の岡田和秀氏は、カメムシ注意報の意義について「注意報が出たからといって家庭菜園や住宅が直ちに被害を受けるわけではない。ただし、果樹産地の周辺に住んでいる方は飛来数が増えるため、窓やサッシの隙間をふさぐなどの備えが有効だ」と解説している。

ホームセンターチェーン・カインズの店舗担当者は「4月時点でカメムシ関連の防虫グッズの売上が前年同月比で伸びている。忌避スプレーや隙間テープの問い合わせが特に多い」と話す。

住宅地への影響——家庭でできる侵入対策

カメムシは光に集まる走光性を持ち、夜間に住宅の照明や街灯に引き寄せられて飛来する。体長10mmほどでも2mmの隙間があれば室内に侵入できるため、以下の対策が欠かせない。

  • 網戸の破れやサッシの隙間を点検し、隙間テープで封鎖する
  • 玄関・勝手口のドア下部にドアスイープを取り付ける
  • 夜間の不要な外灯は消灯するか、カメムシが反応しにくいLED電球(黄色系)に交換する
  • 洗濯物は室内干しに切り替えるか、取り込む前にカメムシの付着を確認する(白系の衣類に付きやすい)
  • 窓周りや玄関にカメムシ用忌避スプレー(ミント系成分配合タイプなど)を散布する

室内でカメムシを見つけた場合は絶対に手で潰さないこと。悪臭が手や衣類に染み付くと簡単には取れない。ペットボトルの上部を切ってじょうご状にした「ペットボトルトラップ」に追い込むか、ガムテープで静かに捕獲するのが効果的だ。

害虫駆除業界への波及

アース製薬は2026年2月に「カメムシまもるスプレー」を含む春の新商品5本を一斉投入済みで、忌避・駆除の両面で商品ラインナップを拡充している。KINCHOも1プッシュ空間処理型の新製品を投入しており、家庭向けカメムシ対策グッズの市場は拡大傾向にある。

害虫駆除の専門業者にとっても、カメムシ関連の問い合わせは5〜6月にかけてピークを迎える。特にマンション高層階への飛来や、換気口からの大量侵入への対応依頼が増加する時期だ。越冬数が平年の3倍という今年は、例年以上の需要増が見込まれる。

カメムシ対策の実用チェックリスト

対策場所具体的な方法費用の目安
窓・サッシ隙間テープで封鎖、網戸の補修100〜500円
玄関ドアスイープ設置、忌避スプレー散布500〜1,500円
外壁・軒下カメムシ用殺虫粉剤を帯状に散布800〜1,200円
洗濯物室内干しに切り替え、取り込み時に目視確認0円
照明外灯をLED電球(黄色系)に交換500〜1,000円
換気口防虫フィルターを貼付300〜800円
庭木スギ・ヒノキの枝打ち、除草で隠れ場所を減らす状況による

まとめ

2026年のカメムシ越冬数は平年の約3倍に達し、2024年の大量発生を再現する条件がそろっている。果樹農家は早期の薬剤散布と袋がけの徹底が求められるが、住宅地でも窓の隙間対策や照明の工夫で被害を減らすことができる。5〜6月にかけてさらに発生数が増える見込みのため、今のうちに備えを進めておきたい。

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引用・参考

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