NYが全米「蚊の街」初の1位に——Terminixランキングが示す分布の異変

米害虫駆除大手Terminix(Rentokil傘下)が2026年4月21日に発表した「全米で蚊が多い都市トップ50」で、ニューヨーク市が初めて1位に立った。2025年は3位だったNYCが、温暖・多雨の異常気象を追い風に急浮上。これまで上位を独占してきた南部・西海岸に代わり、北東部・中西部の都市が軒並み順位を上げた。蚊の活動パターンが地理的にシフトしつつあるという指摘は、日本の蚊媒介感染症対策にとっても無視できないシグナルだ。

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Terminixランキング2026の詳細

このランキングは、全米300超のTerminixサービス拠点で2025年に実施した蚊の駆除・防除サービスの件数データをもとに集計されている。2025年版まで6年連続1位だったロサンゼルスが3位に転落し、NYCが2ランクアップで首位を奪取した。

2026年順位都市名前年比
1位ニューヨーク+2(3位から上昇)
2位ダラス・フォートワース変動なし
3位ロサンゼルス-2(1位から下降)
4位フィラデルフィア+2
5位アトランタ-1
6位ルイビル+26(大幅上昇)
7位ワシントンD.C.変動なし
8位ボストン+7
9位デトロイト+12
10位ヒューストン+12

注目すべきはルイビル(+26)、デトロイト(+12)、ヒューストン(+12)、ボストン(+7)といった北東部・中西部の都市が大幅に順位を上げている点だ。蚊の活動域が南部から北へ広がりつつあることを裏付けるデータといえる。

なぜNYCが1位になったのか

Terminixの主任ベクター科学者であるシドニー・クローリー博士は「今年のランキングが示しているのは、蚊の活動がより動的で予測しにくくなっているという事実だ」と分析。NYCが首位に立った直接的な要因として、2025年の異常な高温と多雨を挙げている。

都市部特有の構造も蚊の繁殖を助けている。排水溝、エアコン室外機のドレン水、屋上の水たまり、公園の雨水桝といった「都市型の滞留水」が無数にあるNYCは、気温さえ上がれば爆発的に蚊が増殖する条件を備えていた。

さらにクローリー博士は「蚊のシーズンが長期化し、地理的な到達範囲も拡大している」と指摘。従来は南部が中心だった蚊のリスクが、気候変動によって全米規模で再配置されつつある。

もう一つのランキング——Orkin版でもNYCは3位

競合のOrkin社(Rentokil傘下の別ブランド)も2026年版の蚊ランキングを発表しており、こちらではNYCは3位にランクイン。Orkin版の1位は6年連続でロサンゼルス、2位がシカゴという結果で、計測期間やサービス拠点の分布によって順位が異なる。ただし、NYCが全米上位3位以内に定着しているという傾向は両社のデータで一致している。

項目Terminix版(2026)Orkin版(2026)
1位ニューヨークロサンゼルス
2位ダラス・フォートワースシカゴ
3位ロサンゼルスニューヨーク
データ期間2025年通年2025年3月〜2026年3月
拠点数300超全米400超

日本の蚊の分布も北上中

米国で観測されている蚊の北上トレンドは、日本でも同時進行している。デング熱やジカ熱を媒介するヒトスジシマカの生息域は過去100年間で約450km北上し、現在は青森県まで定着が確認されている。環境省の予測では、2030年には北海道の札幌・函館周辺にも到達する見込みだ。

時期ヒトスジシマカの北限備考
1950年代栃木県付近当時の分布記録
2020年代青森県現在の定着確認ライン
2030年予測北海道南部(札幌・函館)環境省の温暖化シナリオ
2050年予測北海道全域年平均気温11度以上エリアの拡大

厚生労働省のデータでは、国内のデング熱報告数は2019年の459例から2024年の231例(速報値)と推移しているが、いずれも海外からの輸入症例が中心だ。ただし、2014年には代々木公園を起点とした国内感染例が発生しており、ヒトスジシマカの生息域拡大は国内感染リスクの高まりに直結する。

専門家・業界の反応

Terminixのシドニー・クローリー博士は「蚊の活動パターンが地理的にシフトしていることは、従来の『南部だけの問題』という認識を改める必要があることを意味する」と警鐘を鳴らしている。

Orkin社の昆虫学者シャノン・スケッド氏も「過去10年で蚊の活動は従来のホットスポットを超えて拡大し、全国的な問題になった」とコメント。蚊の活動域のシフトが業界全体の共通認識になりつつある。

国内では、国立環境研究所の研究チームが「気温、降水量、蒸気圧がベクター(蚊)の地理的な生息範囲を決める主要因子」であり、温暖化が進めば熱帯・亜熱帯の病原体やベクターがより高緯度に拡大すると警告している。

読者への影響——日本の蚊対策で押さえるべき3点

米国の事例は「蚊は暑い地域だけの問題ではない」ことを改めて示している。日本の家庭でも以下の3点を意識しておきたい。

  • 蚊はティースプーン1杯(約5ml)の水でも繁殖できる。植木鉢の受け皿、古タイヤ、雨どいの詰まりなど、屋外の滞留水を週1回は点検・除去する
  • ヒトスジシマカの活動ピークは朝6〜10時と夕方16〜18時。この時間帯の屋外活動ではDEET20〜30%配合の忌避剤を使う
  • デング熱の国内発生リスクは排除できない。海外渡航後に38度以上の発熱と頭痛・関節痛が出た場合は速やかに医療機関を受診し、渡航歴を申告する

害虫駆除業界への波及

Terminixの親会社Rentokil社は全米300超の拠点で蚊の防除サービスを展開しており、今回のランキング発表は消費者への啓発と同時にサービス需要の喚起を狙ったものだ。日本でもアース製薬やフマキラーが蚊取り製品の新商品を毎年投入しており、温暖化による活動期間の長期化は市場拡大の追い風になっている。

害虫駆除業者にとって注視すべきは、蚊の活動域が従来の想定より北に広がっている点だ。東北や北海道の業者にとっても、蚊の防除サービスが新たな収益機会になる可能性がある。

家庭の蚊対策チェックリスト

対策カテゴリ具体的な方法頻度・タイミング
滞留水の除去植木鉢受け皿・古タイヤ・バケツの水を捨てる週1回
網戸の点検破れ・たわみの修繕、目の細かい網への交換シーズン前(4〜5月)
忌避剤の使用DEET20〜30%またはイカリジン15%配合の製品を露出肌に塗布外出時
服装明るい色の長袖・長ズボン。蚊は暗い色に集まりやすい朝夕の屋外活動時
庭の管理雑草の刈り取り、雨どいの清掃、排水溝の詰まり解消月1〜2回
室内対策蚊取り線香、電気式蚊取り、ワンプッシュ型殺虫剤の活用就寝前・在宅時

まとめ

Terminixのランキングが映し出しているのは、気候変動が蚊の地理的分布を塗り替えつつあるという現実だ。NYCの首位奪取はその象徴的な出来事であり、日本でもヒトスジシマカの北限が青森県に達している現状を考えれば、従来の「温暖な地域だけの問題」という認識はもう通用しない。滞留水の除去という基本を徹底するだけで蚊の発生量は大幅に抑えられる。シーズン本番を迎える前に、家の周りの水たまりポイントを一度総点検しておきたい。

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引用・参考

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